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[関連ページ] クライン-ゴルドン方程式(続) ユカワ・ポテンシャル 中間子質量の推定


湯川ポテンシャルを導き出す式

ネットに図入り解説

 クライン-ゴルドンの式から湯川ポテンシャルが導き出せるということで、クライン-ゴルドンの式がよく出てきますが、ネットで、核融合アラカルト3というページに、図解入りで、おもしろい解説がありました。内容を抜き出して、ワードで編集しました。ファイルを添付します[添付ファイル割愛]。

U

 上に紹介されているウエブページには、一貫して(入力間違いでなく)「クラウン・ゴルドンの式」と書いてあり、相対論的なエネルギーと運動量の関係式を「クラウン・ゴルドンの式」と呼ぶともあり、その他の内容の正確さも疑われます。(T)

波動関数とポテンシャル:湯川論文 (12) 式と (3) 式の関係

ベーテ-モリソンの教科書から

 2007年4月定例会でHさんが波動方程式としてのクライン-ゴルドン方程式と、ポテンシャルを決めるクライン-ゴルドン方程式のそれぞれの含む定数を同じと見てよいか、という疑問を出されました。私は何となく同じはず、と思っていたのですが、鋭い疑問です。

 昨年出版されてすぐに買った H. A. Bethe and Philip Morrison, "Elementary Nuclear Theory" republication of 2nd ed. (2006, Dover; first ed. 1947; 2nd. ed. 1956, John Wiley & Sons) の18章 "Sketch of Meson Theory of NUclear Forces" に、この疑問が解ける形での記述がありましたので、その概要を紹介します。

スピンが0で、有限の静止質量mをもつ粒子に対する相対論的波動方程式はクライン-ゴルドン方程式である[湯川論文と同じく h/2π を h と記す]:

eq1.gif ---(1)

ここで

eq2.gif ---(2)

ρは核子の密度に比例する。自由空間では、V=0 であり、「静的」中間子場に対しては、(2) 式から、E =0 とすべきである。さらに、1個の点状核子が原点にあるとすれば、クライン-ゴルドン方程式は次のようになる。

eq3.gif ---(3)

ここでδはディラックのδ関数を表わし、g_1 は電気力学の電荷に代わる定数である。

 この方程式の解は

eq4.gif ---(4)

となり、2番目の核子に働くポテンシャルは

eq5.gif ---(5)

である。 g_1 と g_2 は実効的な核子の「電荷」すなわち結合定数である。

 要するに、波動関数とポテンシャルは比例関係にあるので、同じクライン-ゴルドン方程式を満たすのです。なお、湯川の論文では、g_1=g_2 としているので、同論文の (11) 式のポテンシャルにはgの2乗がかかっています。――ベーテらの教科書のこの部分は、湯川の論文をよくかみ砕いて、教育的に書かれているというべきでしょう。――

T

ベーテ-モリソンの (5) 式は自明でないのでは

 (4) 式のΨと (5) 式のΨ(実は V といっていい)は同じΨでしょうか? Ψを座標表示すると同じ r になっていますでしょうか?

 Tさん:要するに、波動関数とポテンシャルは比例関係にあるので、

何らかの理由でそうなることはあっても、本来比例関係があるかどうかは自明ではないはずです。

 Tさん:同じクライン-ゴルドン方程式を満たすのです。

???です。最近、湯川会に出てないので議論を取り違えているのかもしれませんが。

1. ソースがある時、「パイオンの場」の関数形が湯川型である
2. 核子−核子間相互作用の関数形が湯川型である

について、1→2は当然のことではなく、証明されるべきことで、実際に玉垣さんが書いた教科書(講談社の『大学院原子核物理』)には証明のようなものが載っています。湯川ポテンシャルについては、波動関数とポテンシャルが同じ形になりますが、いつもそうなる訳でも、自明でも、ないと考えた方がよいと思います。

O

 [このメールの P.S. 部分とそれに対するやりとりは、「第一論文の (5) (6) 式 」のページに記載しました。(T)]

確かに自明でない

 Hさんの出された疑問をもう少し詳しくいえば、次のようになると思います。

 「中間子第1論文 (3) 式の U はポテンシャルであるが、(12) 式の U は波動関数である。この相違のもとで、mc=λh と簡単に考えてよいのだろうか。」

私はこの疑問について考えながらベーテ-モリソンの教科書を見たところ、上記 (5) 式があり、その辺りの説明に飛びついたという次第です。(4) 式のΨと (5) 式のΨは同じものです。[私は先のメールで、ベーテ-モリソンの記述通りを和訳して紹介しました。]

 しかし、考えて見ると (5) 式は確かに自明ではありません。私は (5) 式を

eqna1.gif

のように勘違いしていたのです。ベーテ-モリソンはなぜ、自明であるかのように (5) 式を書いたのでしょう? 玉垣さんの「証明のようなもの」とは、どういう議論でしょうか?

T

湯川論文の処方箋は分かりにくい

 Tさん:「中間子第1論文 (3) 式の U はポテンシャルであるが、(12) 式の U は波動関数である。この相違のもとで、mc=λh と簡単に考えてよいのだろうか。」

どうなんでしょう? 論文ではそのように書かれているようですが、納得できますか?

 Tさん:しかし、考えて見ると (5) 式は確かに自明ではありません。

ですよね。

 Tさん:私は (5) 式を

eqna1.gif

のように勘違いしていたのです。ベーテ-モリソンはなぜ、自明であるかのように (5) 式を書いたのでしょう? 玉垣さんの「証明のようなもの」とは、どういう議論でしょうか?

 それならイイセンを行ってます。詳しくは後で書くとして、考え方としてはどこかに原点を定め、r1 に核子 A があってπ中間子を出す、さらに同じ能力を持つ核子Bがr2にありそのπ中間子を受け取る、そのとき核子Aと核子 B との間のポテンシャル(核子 A が存在することによって核子 B が感じるポテンシャル)はどのような形か、ということになるだろうと思います。ポテンシャルは座標表示では r1−r2、すなわち相対座標の関数になるはずです。

 結局、

1. ソースがあるときπ中間子がどのように空間分布しているか
2. 核子と核子はπ中間子をやりとりして相互作用している。では相互作用ポテンシャルはどのような関数形か

という問題が当然あって、1→2をどう導くか、その処方箋が必要だということです。 湯川の論文ではその処方箋をどうしたのか、いまひとつ分かりにくいと思いませんか?

O

シュレーディンガー波動関数でなく、場の変数

 フェルミの "Nuclear Physics" 中間子論のところを見ると、クライン-ゴルドン方程式を満たすφについて

φは場の変数(あるいはその1成分)であり、シュレーディンガー波動関数と混同してはならない。

と述べています。これで謎が解けるように思われます。

 クライン-ゴルドン方程式は相対論的波動方程式と呼ばれ、また、湯川もそれを満たす関数 U を論文の (12) 式のところでは波動関数と呼んでいます。しかし、(12) 式の U はシュレーディンガー方程式を満たすという意味の波動関数ではなく、フェルミのいっている通り、場の変数と考えると分かりやすいのではないでしょうか。

 つまり、原点に電荷 e があるときの電磁場のクライン-ゴルドン方程式の静的解が静電場

eqnb1.gif

を与え、距離 r の点にある電荷 e との相互作用エネルギー(ポテンシャル)は

eqnb2.gif

となります。これと同様に、原点に1個の核子があるときの湯川型クライン-ゴルドン方程式の静的解は、スカラー中間子場

eqnb3.gif

を与え、そして、「第2の核子を r のところにおけば」(フェルミによる。ベーテ-モリソンにはこれが省略されているので、少し分かりにくい)相互作用のエネルギーは

eqnb4.gif

となる、ということでしょう。

 上記の私の解釈が、Oさんのいわれる処方箋になりませんか?

 Oさんの「ポテンシャルは座標表示では r1−r2、すなわち相対座標の関数になるはず」については、フェルミやベーテ-モリソンの本では、第1の核子が原点にあるとしているので、ポテンシャルは r だけの関数になっています。

T

mc=λh の結論に問題はない

 先のメールへの追伸です。

 先のメールに述べたことから考えると、Hさんの疑問への答えは次のようになるかと思います。

  • クライン-ゴルドン方程式は相対論的波動方程式と呼ばれるが、それを満たす関数は場を表わすものである。(中間子第1論文には、 (2) 式が (3) 式の静的解である、と書かれているが、厳密にいえば、(2) 式からファクター g を一つ除いたものが解である。)
  • (3) 式と (12) 式は、どちらも場を表わす関数を解とする同じものの別の表現と見るべきである。(湯川も、どちらも「波動方程式」と呼んで、区別していない)。
  • 以上のことから、 (3)、(12) 両式を比較して mc=λh と結論することに何ら問題はない。

 私が定例会のときに思っていた結論へ、遠回りして戻って来ました。

T

クライン-ゴルドン方程式の解と中間子の存在確率

 その解はπ中間子の空間的な存在確率に対するなんらかの情報を与えているはずです。論理的な不備は承知で、「関数の値の大きい所にはπ中間子が多く見つかり、小さいところはπ中間子が見つかることは少ない」と考えて良いのでは。でもまさに「」中での主張は確率解釈そのものなんですけどね。

 これはOの私見であり、まったくナンセンスなことをいっているのかもしれません。誤解されるといけないので、改めて私見であることを強調しておきます。

 でも、そう考えないとこの文章以下の論考が意味を持ちませんので。

O

ψ*ψが正定値であることを保証しないが

 クライン-ゴルドン方程式の解ψは、ψ*ψが positive definite であることを保証しないので、ディラックは、それを保証するような形でディラック方程式をあみだしたそうです[R. Penrose, "The Road to Reality" p. 618 (Vintage, London, 2005) ]。また、場の量子は力を媒介するときには、仮想的に存在するのですから、その存在確率を議論できるかは疑問です。しかし、火のないところに煙はたたないとの諺と同様に、場の量子が仮想的にせよ、その「存在確率」が大きいところでなければ、場の変数の絶対値も大きくならないでしょうね。

T

『大学院原子核物理』中の証明

ソースが点状だから

 Tさん:クライン-ゴルドン方程式の解ψは、ψ*ψが positive definite であることを保証しないので、ディラックは、それを保証するような形でディラック方程式をあみだしたそうです…。

 ワインバーグの教科書の最初の方には、シュレーディンガーは最初、相対論的な波動方程式(つまりクライン−ゴルドン)を導いたが、正定値である保障がないので非相対論的なシュレーディンガー方程式を導いたと書かれていたと記憶します。Sさんに話すとそうではなく、スペクトルが合わなかったからじゃないのか?といわれ、そういえばそんなことも書いてあったかなあと自信がなくなりました。いま、本は行方不明。

 Tさん:また、場の量子は仮想的にのみ存在するのですから、その存在確率を議論できるかは疑問です。…。

 仮想光子とか、仮想粒子ならそうですが、エネルギー正で real なボゾンだってあるのだし…。難しいですねえ。

 さて問題の証明は、[玉垣良三著『大学院原子核物理』 (講談社) p. 126, 127 とです。[著作権物件につき、コピーへのリンクを割愛。]

 図[上記ページ付近のもの。著作権物件につき、リンクを割愛]をご覧下さい。r1 と r2 に核子があります。本当は核子は有限の大きさを持つのですが、点状であると仮定すると、(4-5) 式のようにδ関数が右辺に登場し、(4-6) のようにπ中間子場が求まります。φ2は r2 の位置にある核子が吐き出した中間子の場です。これが r1 にある核子と相互作用するのです。r1 にある核子の密度関数をρ1とすると相互作用 V はφ2とρ1を掛け合わせ、座標積分すればいいはずです。その式が次ページの (4-7) です。

 この導出をご覧になれば分かるように、中間子場φと相互作用 V の関数形が湯川型になるのは、核子の密度関数ρがδ関数、つまり点状であるという仮定(あるいは近似)を置いているのです。ρが点状であるという仮定があるからこそ、φも V も湯川型になるのです。もちろん、実際にはρは点状などではなく、有限の大きさを持っています。

 こうして導かれた湯川型の相互作用(OPEP - one pion exchange potential - と呼ばれます)がいいかどうかは、実際の実験データを再現できるかどうかで評価されるべきものです。実際、低エネルギーでの核子-核子散乱、重陽子の結合エネルギー、4重極モーメント、陽子-陽子系、中性子-中性子系に束縛系がないことなど様々な事実を再現できるので、もっともだ、仮定は悪くないと思われます。

 しかし、限界もあり、高エネルギー散乱のデータは合うはずもなく、α(He原子核)のエネルギー準位すら計算することができません(合わない)。それは、核子を点状と看做した悪さより他のメソンが効くからということもありますが。

 P.S. 1. どうです? お気づきだと思いますが、場の変数?φをあたかも波動関数の如く扱っているでしょう? これが気持ち悪いと思うのがマットウな感覚なのか、ズレた感覚なのか…。所詮、式は式、解釈は解釈なのですが。

 P.S. 2. g2 の前の符合が気になると思います。場がスカラーであるかベクトルであるかを玉垣さんは議論しています。π中間子は偽スカラー。スカラーであるσメソンについても言及しています。これまたちょっと難しい話。

O

"Advanced Quantum Mechanics" にも

 Oさん:ワインバーグの教科書の最初の方には、シュレーディンガーは最初、相対論的な波動方程式(つまりクライン−ゴルドン)を導いたが、正定値である保障がないので非相対論的なシュレーディンガー方程式を導いたと書かれていたと記憶します。Sさんに話すとそうではなく、スペクトルが合わなかったからじゃないのか?と言われ、…

 Sさんの記憶が正しいようです。"Schrodinger first derived the relativistic equation, then became discouraged because it gave the wrong fine structure for hydrogen, ..." とあります [S. Weinberg, "The Quantum Theory of Fields" Vol. I, p. 4 (Cambridge University Press, 1995)]。

 Oさん:仮想光子とか、仮想粒子ならそうですが、エネルギー正で real なボゾンだってあるのだし...。難しいですねえ。

 少なくとも湯川理論の範囲では仮想粒子なわけで。

 玉垣さんの教科書はなかなか親切に書いてありますね。似たような説明は Sakurai "Advanced Quantum Mechanics" にもあり、最近眺めていたところです。

 Oさん:ρが点状であるという仮定があるからこそ、φも V も湯川型になるのです。

 そうですね。

 Oさん:
 P.S. 1. どうです?お気づきだと思いますが、場の変数?φをあたかも波動関数の如く扱っているでしょう?

 (4-7) 式でしょうか。これは私には、場という感じですが。

 Oさん:
 P.S. 2. g2の前の符合が気になると思います。場がスカラーであるかベクトルであるかを玉垣さんは議論しています。…

  同じ説明が Sakurai にもあり、詳しくは後の章にあると。しかし、後の章は難しそうです。

T

ともかく処方箋が分かった

 Tさん:Sさんの記憶が正しいようです。"Schrodinger first derived the relativistic equation, then became discouraged because it gave the wrong fine structure for hydrogen, ..." とあります。

 そうでしたか...。でも、相対論的にしたから出ないというのはおかしくて、たぶん計算間違えだったんじゃないのかなあ?

 Tさん:少なくとも湯川理論の範囲では仮想粒子なわけで。

 でも、実粒子でもクライン・ゴルドンでいいはずだから...。(昔、ハイパー核をやってたころ、同期の阪大の子はK中間子をクライン・ゴルドンを使っていた。でも、ぼくはシュレーディンガー。速度が大きいので相対論的にやるべきだというのは分かっていたんだけど....。)

 Tさん:玉垣さんの教科書はなかなか親切に書いてありますね。似たような説明は Sakurai "Advanced Quantum Mechanics" にもあり、最近眺めていたところです。

 Sakurai は無人島へ持っていく本として、購入しなきゃ。

 Tさん:
 > ρが点状であるという仮定があるからこそφもVも湯川型になるのです。
 そうですね。

 たぶん、ρを有限にしても湯川型に毛が生えたようなものになり、大筋は変わらないだろうと思います。ともかく、中間子場から相互作用を導く処方箋が分かったということですね。

 Tさん:(4-7) 式でしょうか。これは私には、場という感じですが。

 そうですか。ぼくは場を知らないので...。

O

私も納得できました

T先生:「φは場の変数(あるいはその1成分)であり、
シュレーディンガー波動関数と混同してはならない。」
と述べています。これで謎が解けるように思われます。

 そうか、そういうことですよね。なるほど。それを聞いて、私も納得できました。

T先生:
・クライン-ゴルドン方程式は相対論的波動方程式と呼ばれるが、
 それを満たす関数は場を表わすものである。(中間子第1論文には、
 (2) 式が (3) 式の静的解である、と書かれているが、厳密にいえば、
 (2) 式からファクター g を一つ除いたものが解である。)
・ (3) 式と (12) 式は、どちらも場を表わす関数を解とする同じもの
 の別の表現と見るべきである。(湯川も、どちらも「波動方程式」と
 呼んで、区別していない)。
・以上のことから、 (3)、(12) 両式を比較して mc=λh と結論する
 ことに何ら問題はない。

 ありがとうございます。そういうことですね。要は、湯川の (12) 式の U は波動関数ではない、ということです。

 T先生とOさんのやりとりが長くなってややこしくなっていますので、私なりに整理したものを書きます。

H

Oさんへ(H)

Oさん:
1. ソースがある時、「パイオンの場」の関数形が湯川型である
2. 核子−核子間相互作用の関数形が湯川型である
について、1→2は当然のことではなく、証明されるべきことで、

 それほどたいそうなことではないと思いますよ。
 クーロン力で考えてみるとよいのではないでしょうか。

1. 点電荷(ソース)qがあるとき、クーロン場(クーロンポテンシャル)はkq/r。
2. 位置r1に点電荷q1があり、位置r2に点電荷q2があるとする。
  q1によるクーロンポテンシャルの、r2における値はkq1/r12。
  (|r2-r1|をr12と書きました)
  したがって、この2粒子系のエネルギーは、q2×(kq1/r12)=kq1q2/r12。 

 1/rという関数系をクーロン型と呼ぶならば、どちらも関数形はクーロン型です。

==========

 話は変わりますが、いくつか質問があります。

Oさん:
(4) 式のΨと (5) 式のΨ(実はVと言っていい)は同じΨでしょうか?
Ψを座標表示すると同じrになってますでしょうか?

 座標表示という言葉の意味がわからないのですが、どういう意味でしょうか。

Oさん:
でも、相対論的にしたから出ないというのはおかしくて、
たぶん計算間違えだったんじゃないのかなあ?

 「相対論的波動方程式(ディラックではなくクライン-ゴルドン)から水素原子のエネルギースペクトルが正しく計算できる」とおっしゃってるんでしょうか。

Oさん:
> (4-7) 式でしょうか。これは私には、場という感じですが。
そうですか。ぼくは場を知らないので...。

 ここでいう場とは、クーロンポテンシャルのような意味ですよ。ご存じないとは思えないのですが。

H

λh = mc の置き換えこそが湯川論文の「物理」

 (12)式はまさに(3)の場を量子化した所ですね(hをかけて)。そのとき λh を mc に書き換えずにそのまま(12)式を書いたとします。そして、その(12)を場の演算子の方程式と考えたとき、古典場ではポテンシャルを急激に落とすために取り入れたλが、まさに力を媒介するボーズ粒子の質量 (×c) が来るべき所(定数)に来ており、これが mc であると考えざるを得ない形をしています。で、λh = mc と置き換える。それこそがこの論文の「物理(質量が伝達距離を決めていたんだ…という)」ではないかと思います。たとえば、全く他の物理を考えているとして、最終的に(12)の形になって、(mc)^2の部分に何かが来たら、それを (mc)^2 と置き、m をそのボーズ粒子の質量とすると思います。

KK

Hさんへ(O)

 それほどたいそうなことではないと思いますよ。クーロン力で考えてみるとよいのではないでしょうか。
 1. 点電荷(ソース)qがあるとき、クーロン場(クーロンポテンシャル)はkq/r。

 これは、電荷があると仮想光子の場が1/rの形をしているという意味ですね。

 2. 位置 r1 に点電荷 q1 があり、位置 r2 に点電荷 q2 があるとする。
 q1によるクーロンポテンシャルの、r2 における値は kq1/r12。
 (|r2-r1|を r12 と書きました)

 1/|r-r1| のフォトンの場にδ(r-r2)の電子の密度関数を掛け、r で積分すれば、

 したがって、この2粒子系のエネルギーは、q2×(kq1/r12)=kq1q2/r12。

上記がこのしたがって、の意味です。

 1/r という関数系をクーロン型と呼ぶならば、どちらも関数形はクーロン型です。 

 そのとおり、クーロンならクーロン、湯川なら湯川、ガウシャンを与える波動方程式(がもしあるなら)ならガウシャン、ローレンツィアンならローレンツィアン。

 でもそれは、ソースが点であることを仮定しているでしょう。電子ならまだしも核子は大きさをもっているんですよ、ということが言いたかったのですが、趣旨をお分かりいただけたでしょうか。

 (4) 式のΨと (5) 式のΨ(実はVと言っていい)は同じΨでしょうか?
 Ψを座標表示すると同じrになってますでしょうか?
 座標表示という言葉の意味がわからないのですが、どういう意味でしょうか。

Ψは位置の関数なのだろうけど、r-r1 とか、r1-r2 とかあらわに書かないと、混乱しますよ、ということをいいたかったのです。

 > そうでしたか…。でも、相対論的にしたから出ないというのはおかしくて、
たぶん計算間違えだったんじゃないのかなあ?
 「相対論的波動方程式(ディラックではなくクラインゴルドン)から
水素原子のエネルギースペクトルが正しく計算できる」
とおっしゃってるんでしょうか。

 電子だからディラック方程式か。でもたしかワインバーグの本には、最初の(相対論的にやった)シュレーディンガーのは計算はおかしくて…と書かれていたと記憶にあったので。計算間違えは云々は引っ込めておきましょう。

 確かにフェルミオンにクライン-ゴルドンは変なんだけど、相対論的にしたのに出ないというのはなぜ?(シュレーディンガーも悩んだでしょうね。)

>>  (4-7) 式でしょうか。これは私には、場という感じですが。
> そうですか。ぼくは場を知らないので...。
 ここでいう場とは、クーロンポテンシャルのような意味ですよ。
 ご存じないとは思えないのですが。

 電場から受ける力は、F=qE なんだから、一連の手続きは(δ関数や積分こそはいるものの、力とポテンシャルの違いもあるけど)電荷×電場と一緒だ!と思えば、そうなんだけど、ちょっと気持ち悪いなあ。ナイーブにはそうなのだろうけど、ポテンシャルの形を正確に決めようというときにそれでいいのかなあ。(まあ、ソースの大きさがどうであれ、ロングレンジかショートレンジかは交換される粒子の場だけでほぼ決まってしまうのは間違いないだろうけど。)Hさんは folding potential とか平均場っていうの聞いたことがありますか? あんなのと同じような問題はないのかなあ。

O

論理の飛躍を通して真理を見抜いた

KKさん:
これが mcであると考えざるを得ない形をしています。で、
λh = mc と置き換える.
それこそがこの論文の「物理(質量が伝達距離を決めていたんだ…という)」
ではないかと思います.

 私もそう思います。論理的必然ではなく、論理の飛躍を通して真理を見抜いたという感じでしょうか。(そしてその飛躍も一度経験すると、必然に思えてくる。)

==========
Oさん:
> 1.点電荷(ソース)q があるとき、クーロン場(クーロンポテンシャル)は kq/r。
これは、電荷があると仮想光子の場が 1/r の形をしているという意味ですね。

 そうなのかもしれませんが、私は素朴に(古典論的に)、クーロンポテンシャルは kq/r だといっているだけです。

1/|r-r1|のフォトンの場にδ(r-r2)の電子の密度関数を掛け、r で積分すれば、

 これも、素朴に、点電荷を考えているだけです。

でもそれは、ソースが点であることを仮定しているでしょう。
電子ならまだしも核子は大きさをもっているんですよ、ということがいいたかったのですが、
趣旨をお分かりいただけたでしょうか。

 大きさとおっしゃる意味がよくわかりません。たとえば、電子(1個)の波動関数が、ある広がりを持っていたとしますよね。そのときOさんの語感では「電子は点ではなく大きさをもつ」ということになりますか?

==========
Oさん:
>座標表示という言葉の意味がわからないのですが、どういう意味でしょうか。
Ψは位置の関数なのだろうけど、r-r1 とか、r1-r2 とかあらわに書かないと、混乱しますよ、ということをいいたかったのです。

 わかりました。

計算間違えは云々は引っ込めておきましょう。

 わかりました。

でも、確かにフェルミオンにクライン-ゴルドンは変なんだけど、
相対論的にしたのに出ないというのはなぜ?
(シュレーディンガーも悩んだでしょうね)

 さて、どうなんでしょうね。シュレーディンガー方程式では、フェルミオンかボソンかなんて関係ないですしねえ。

…ちょっと気持ち悪いなあ。ナイーブにはそうなのだろうけど、
ポテンシャルの形を正確に決めようというときにそれでいいのかなあ

 「ポテンシャルの形を正確に決めよう」とはどういう意味でしょう。exp(−λr)/r よりももっと正確にということ?

Hさんは folding potential とか平均場っていうの聞いたことがありますか?

 知りません。すみません。

 このたびの一連のやりとりでの、Oさんの問題意識が理解できません。(批判や疑問を提起していただくのは、議論が活性化するのでうれしいのですが、批判や疑問だけで終わらずに、Oさんご自身のお考えを積極的に述べていただけるとありがたいです。)

H

場の粒子をキャッチボールするダイアグラムの振幅から

 ぼく以上にすでによくご存知かもしれませんが、念のため、なぜ (12) の形になったときに、λh が mc と考えざるを得ないか?を説明してみたいと思います.

 (12) に従う場の粒子をキャッチボールするダイアグラムの振幅には、伝播関数の部分にちょうど(12)左辺の逆数のようなものが現れます。発表予稿集 p.10 の上から3番目の式で (k-k0)^(-2) (光子の4元運動量の自乗の逆数)があるのは、ちょうど光子の運動方程式が湯川論文 (3) の λ=0に対応する…というのと同様です。

 すると (12) から、E^2−(pc)^2−(λhc)^2 が振幅の分母に来るのですが、相対論により E^2−(pc)^2=m^2c^4 ですので、λh=mc の時、分母が 0、すなわちこのような質量を持つ粒子が受け渡される振幅が最大になります。ここで E=W です。このままでは最大どころか無限大ですが、それについての説明は省きます。

KK

振幅が最大になるというλh=mc の説明は難しい

 KKさんの「λh=mc と置き換える。それこそがこの論文の『物理』ではないかと思います」ということばについては、Hさんと同じく、その通りと思います。

 ところで、KKさんの「場の粒子をキャッチボールするダイアグラムの振幅が最大になる質量」としてのλh=mc の説明は、場の量子論を昔ほんの少し独学でかじっただけでほとんど分かっていない私には、「そういうことになるのかなぁ」という程度の理解しか出来ません。お暇の折にもう少し詳しく説明していただけるとありがたいです。[E^2−(pc)^2 - (λhc)^2 が振幅の分母に来るということなどについて。どういう教科書のどこを見ればよいということでも結構ですが。]また、振幅が無限大になっては断面積等が求まりませんが、その対策は、朝永らのくりこみ理論と関係してくるのでしょうか。

 なお、Hさんの「このたびの一連のやりとりでの、Oさんの問題意識が理解できません」についてですが、枝葉のところでは納得できない発言があったとしても、大筋では、クライン-ゴルドン方程式の解としての場の関数とポテンシャルの関係の理解を深める点で大いに役立ったと思います。

T

電子 (1個) の波動関数が広がりを持てば?

 Oさん、できましたら、次の質問にだけでも答えていただけませんでしょうか。(もっと早くに確認しておくべきでした。)議論がかみあわないとき、言葉の使い方が共通していなかったからだ、というのはよくあることですよね。

H:
大きさとおっしゃる意味がよくわかりません。
たとえば、電子(1個)の波動関数が、ある広がりを持っていたとしますよね。
そのときOさんの語感では「電子は点ではなく大きさをもつ」ということになりますか?

H

「大きさ」はソースの扱い方では?

 上記のHさんのご質問について、私の考えを述べます。

 Oさんの「大きさ」は、相互作用のソースとして、大きさのない点として扱う(δ関数を使う)場合と、拡がりのある関数を使う場合とに分けて、後者を「大きさ」がある、という使い方をしておられて、ソースにかかわる粒子自体が大きさをもつ、あるいはもたない、というのとは、意味がいささか異なると思います。なお、電子の波動関数は、存在確率に関係していて、電子自体の大きさではないでしょう。

T

ファインマン伝播関数:グリーン関数そのもの

 T先生、Hさん、Oさんの3人の方の議論は、私にとっても非常に有意義でした。素粒子物理学実験を修めたとはいえ、恥ずかしながら場の理論をさらっと上からなぞった程度で、自分の中に落ちていませんでした。いい加減な認識の所を、Hさんの疑問についての答えを自分なりに考えている過程で、基礎的な部分の私自身の理解、認識がかなり深まったと喜んでいます。まだたりないですが…。

 T:[E^2−(pc)^2 - (λhc)^2 が振幅の分母に来るということなどについて。
どういう教科書のどこを見ればよいということでも結構ですが。]
また、振幅が無限大になっては断面積等が求まりませんが、その対策は、
朝永らのくりこみ理論と関係してくるのでしょうか。

 これはファインマン伝播関数のことなのですが、グリーン関数そのものになっています。無限大の消去は複素平面上で線積分することによって避けます.くりこみ理論とは別のことです。これではまるで答えになっていませんので、伝搬関数については、添付[公開遠慮のPDF]のように説明をトライしてみました。

 参考文献は、長島順清、p.84 素粒子物理学の基礎I、朝倉物理学大系3です。私は長島先生より、この辺りのことを学びました。本では、光子場すなわちベクトル場の説明になっており、慣れなければ μ、νで記した成分のことまで考えるのが難しいと思い、私の方はパイオンに合わせてスカラー場での説明を試みました。そして、方程式の演算子の逆数がでて来る所までで説明を終わっています。本ではその先で無限大の避け方の説明に入りますが、これについては複素解析をかじっていない人にとっては、本質は分かりにくいと思います。

 Dirac の論文 (1930ごろ) で、複素積分を使わずにやっているのがあったと思いますので後で報告します。この論文内でディラックは、Dirac 方程式ででてくる陽電子を 陽子と考えたいところがあって、そういう旨を述べている興味深い論文です。まだ素粒子に電子と陽子しか無かった時代に正電荷になるべき粒子が予言されたのだから、質量の違いをなんとかして、それを陽子と考えたいという気持ちはよくわかります。

 実験屋なので…という言い訳は許されないと思い、説明に臨んではいますが、決して自信を持って解説しているわけではありません。間違えが一人歩きしてもまずいので、上に置いた説明文はあくまで会の中での議論の範囲で使っていただければと思います。また、もっと詳しい人はぜひ誤りの指摘などをしてください。

KK

高レベルの理解への努力の意義

KKさん

 私の要望と疑問に早速応えていただき、ありがとうございます。PDFを拝見しました。まだ式をきちんとたどってはいませんが、おおよそ分かったような気になりました。

 ただ、この会の多くの皆さんには、とても難しく感じられるかも知れません。したがって、私の質問は、高校生レベルでも理解できるような湯川論文の説明を目指している会の趣旨からは、それた道へとKKさんを引っ張り込む結果になったかと思います。

 しかし他方では、自らがより高レベルの理解をしておく、あるいは、そういう理解に近づく努力をしておくことによってこそ、やさしいレベルでの説明が考えやすくなるのではないだろうか、とも思っています。

T

…クライン-ゴルドン方程式…

1930年代にはよく知られてはいなかった

 [この項は「クライン-ゴルドン方程式(続)」のページの末尾へ移して、編集し直しました。]

 クライン-ゴルドン方程式(続)へ行く


Tag: クライン−ゴルドン方程式 波動関数 ポテンシャル グリーン関数 ファインマン伝播関数 玉垣良三


修正意見等を書き込んでください。もちろん直接修正してもらってもかまいません。

最新の10件を表示しています。 コメントページを参照

  • 数式から画像に変換してくれるサービスを利用しました -- いわさき 2007-04-16 (月) 14:45:38
  • ありがとうございます。奇麗な式が表示できますね。ところで、(3) 式の△のあとの符号は−でした。修正するには、どうすればよいのでしょうか。 -- T 2007-04-16 (月) 16:07:53
  • 修正というより作り直しになります。 -- いわさき 2007-04-16 (月) 17:30:36
  • 作り直していただき、ありがとうございます。GIFで貼りつけてあるのですね。 -- T 2007-04-16 (月) 20:06:24
  • このページへ追加のコピーが出来ませんでした(1ページの長さに制限があるのでしょうか)ので、同じ題名に「(続)」をつけたページを作りました。 -- T 2007-04-28 (土) 08:44:43
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Last-modified: 2017-07-09 (日) 18:25:58 (105d)