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「理研八十八年史から」の説明

理化学研究所のWeb「理研八十八年史から」にある 量子力学草創の渦中へ では、

「コペンハーゲン精神」は、「協力の精神、形式張らぬ自由な討議、しかもユーモアに裏打ちされた傾倒の精神」といわれる。

と書かれている。

P. Robertson, "The Early Years: The Niels Bohr Institute 1921-1930" から

This particular approach to the problem of physics, characterized by its emphasis on cooperation and its informal atmosphere, and stamped to no small degree by Bohr's own personality and outlook on life, came to be know as the Copenhagen Spirit. ... For one biographer of Bohr, the essence of this spirit was "that blend of high intellectual endeavour, of venture, of profound involvement, and antics ....

 これを読むと、「理研八十八年史から」の説明は簡潔にうまくまとめていると思われます。"Antics" という語が「ユーモア」に相当するでしょう。(T)

朝永が湯川に語るコペンハーゲン・ガイスト(精神)

『座談 日本における素粒子論の黎明』(朝永振一郎著作集10 所収[『科学』1967年7月号 田村松平 朝永振一郎 湯川秀樹 司会 井上 健]) の中で、湯川の質問に対し朝永がこたえる形でコペンハーゲン・ガイスト(コペンハーゲン精神)について語っています。

湯川: 一度朝永さんにききたいと思っていたことなのですがぼくは今日にいたるまで、コペンハーゲン・ガイスト(Copenhagener Geist)というものが何かわからない。さかんに皆さんがおっしゃるのだけれども・・・・。

朝永: 解釈は人によって違うのだろうと思うけれども、ハイゼンベルクの解釈はこうだと思う。つまり本当の量子力学がつくられる以前には、ボーアの対応原理で答を出すことをやっていたわけですが、答を出すのに必ずしも論理的な必然性だけを追うのではなくて、途中でひょいと手品みたいなことをやらなければならない。この手品をうまく使うための方法は当時理論として formulate されてはいないわけです。ところがコペンハーゲンにいくとそれがうまくゆく(笑)。それでハイゼンベルクは「Gefuhlmassig に量子力学はすでにできていた」という言葉を使っている。

湯川: Gefuhlmassig に。なるほどねえ。

朝永: つまりコペンハーゲンに行くと、あそこには何か Geist がただよっていて・・・・。

湯川: なるほどね、わかった。

井上: 単に説得力というような主観的なものではなく、もう少し客観的なものがある、という感じでしょうか。

湯川: どうかなあ・・・・。

朝永: 客観的に文字で書いたものは何もないが、しかしコペンハーゲンの人たちがお互いにそれを通じて共通に理解し合うことのできる何ものか。正に Geist なんだ。日本語の「精神」じゃ適切でない。

田村: 「精神」的(geistig)ではなくて「亡霊」的(geistlich)ですかね。

朝永: ハイゼンベルクがその書いたものの中で Gefuhlmassig とか Copenhagener Geistとかの言葉を使うところをしらべますと、どうも紙に書かれたりことばや文字になって formulate されたものは何もないけれども、コペンハーゲンの人間と人間との間に何ものかが、そういう formulation に代わる何ものかがただよっていて、コペンハーゲンへ行くとそれに導かれて問題がとけちゃう・・・・という意味らしい。

田村: これはぼくには初めてだな。

湯川: わりに真実に近いんじゃないかと思うね。ぼくはそれをある種の催眠術と思うけれどども。ぼくはボーア先生についてかねがね感じているのは、非常にソクラテス的な面のあること。それは、西欧の学問の伝統を通じてソクラテス以来あるわけです。しかし、それだけではまだ Copenhagener Geist にはならない。つまりソクラテス的なものプラス何かというその何かがまだよくわからない。たとえば仁科先生をみていますと、ボーア先生ともまた違うんだけれども・・・・。

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Tag: コペンハーゲン コペンハーゲン精神 環境 ボーア


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Last-modified: 2007-07-04 (水) 20:09:45 (3611d)