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[関連ページ] パイオン アンダーソンとミリカン


ミューオンは中間子?

当時ミューオンは中間子と考えられていた?

 教科書「素粒子物理学への招待」のなかに

μ± ミュー電子(muon)
  • 1936 C.D.Anderson(米)宇宙線中に200meの質量の粒子を発見
  • 1946 坂田・井上その粒子は湯川粒子とは別ものであることを指摘
  • 1946 C.F.Powell π+→μ+→e+の観測によりそのことを確認

素粒子の分類でレプトンになっていますが、当時は中間子と考えられていたのですか?

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名残があってミュー中間子と書かれた

 あえて、湯川粒子とは別物であると指摘したことが掲載されていることから、当時湯川が新粒子を提唱したあとに、「それらしい」粒子が発見されたわけですから、湯川粒子の第一(唯一の)候補となったのは自然でしょうし、湯川粒子とアンダーソン発見の粒子との間の違いについては、理論のほうが誤りであった可能性もあるため、三者(湯川、朝永、坂田)三様のアプローチがなされたのでしょう([00551] 参照)。

 そういう名残があってミューオンのことをミュー中間子と書かれたのだと思います。もちろん、発見当時はミューオン以外に中間子の候補となるべき粒子がなかったため、湯川自身も新聞などには「中間子」と語っていました。

 神戸大学附属図書館から “電子”の湯川博士その後の研究を発表 世界学界の注視裡、四月広島で 日本工業新聞 1941.3.27(昭和16)

この記事中で湯川が語っているに、

この新粒子は今日一般に中間子(メソトロン又はメソン)と呼ばれ、

とあるので欧米での名称もメソトロンとメソンとで揺れていたころなのでしょう。

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科学の進歩で定義は変わる

 湯川は核力を媒介する粒子を予言し、その質量が核子と電子の間だったので、その粒子は中間子と呼ばれました。

 ほどなく、核子と電子の間の質量に新しい粒子が見つかったので(μ、36年)、その粒子は湯川の予言した粒子であろうと当初思われました。ところが、核力を媒介する粒子にしては寿命が長すぎるのでおかしいという話が持ち上がります。その訳を湯川、朝永、坂田らはそれぞれ別の理由で説明しようとしたのは湯川会の皆様もご存知のとおりだと思います。

 結局、最初に見つかったμは核力を媒介する粒子でなく、核力を媒介する粒子πが崩壊してできたものだったのです。

 現在、物質粒子は強い相互作用(核力もこの仲間)が働くハドロンと全く働かないレプトンに分類されます。μは電子同様強い相互作用が全く働かないレプトンであることが分かっています(発見当時は分からなかった)。

 ハドロンはさらにスピン統計の違いによりバリオンとメソンに分類されますが、バリオンもメソンもクォークからなる複合粒子であることは「クォーク勉強会」でやったとおりです。

 あえて日本語に翻訳すれば、ハドロン(強粒子)、バリオン(重粒子)、メソン(中間子)、レプトン(軽粒子)ということになりますが、重さに関する名前の由来は歴史的な意味しかないと思っていただいて結構です。すなわち、核子(重粒子)より思いレプトンτ(1777MeV)もあるのですから(核子の質量は940MeVくらい)。もちろん、核子より重い中間子もいくつも発見されてます。

 古い書物には「μ中間子」という記述がありますが、現在では質量に関係なく中間子は強い相互作用をするボソンを意味しているので、その記述はおかしい、誤っているということになります。それは科学が進んで定義が粒子の質量で分類するより適切になったためとお考え下さい。

 P.S. 古い本には「アンドロメダ星雲」と書かれたものがありますが、「アンドロメダ銀河」ですよね、惑星冥王星も準惑星だか矮惑星とやら呼ばれるものになったのも科学が進んでより適切な定義が与えられたからですよね。

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ミューオンの発見者たち

ネッダーマイヤーが筆頭著者

Re: 不確定性原理による中間子質量推定  論文集で思い出しましたが、Chronology of Milestone Events in Particle Physics には、1895年から1995年にかけての物理学上の主要論文の紹介と一部の論文については、TeXソースファイル及びPDF化された論文をダウンロード出きるようになっています。チャドウィックの中性子についての論文等も含まれています。一度ご覧下さい。

なんかがありましたが、われわれはよく「1937年にアンダーソンらが湯川粒子らしきものを発見し、・・・」といいますが、その論文はネッダーマイヤーが筆頭著者なんですね。

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ネッダーマイヤーはアンダーソンの学生

 セグレの「X線からクォークまで」によれば、ネッダーマイヤーはアンダーソンの学生だったということです。また、ミューオンの発見を発表したときには、アンダーソンはすでにポジトロンの発見(1932)でノーベル賞受賞者(1936;ヘスと共同受賞)となっていました。それで、誰もがミューオンの発見者たちの代表はアンダーソンと見るのでしょう。

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仁科らは2番目

 「日本における中間子論の発展」(早川幸男 「自然」1980年10月号)によると、

アンダーソンは、”中間子発見”の発表をためらっていた頃にアメリカの東部を訪れて、MITのコロキウムで自分の実験について話をした。それに出席していたストリート(J.C. Street)とスティヴンソン(E.C. Stevenson)も同様な飛跡を得ていたので、お互いに自信を得て、両グループが発表に踏み切った。中間子の発見について往々にして見逃されてきたのが、仁科芳雄、竹内柾、一宮虎雄の業績である。理研組の発見は1937年8月28日付で『フィジカル・レビュー』に投稿されたが、長過ぎるという理由で書き直しを要求されたため、雑誌に現れた順番からいえば3番目になっている。投稿順からいえばストリートとスティヴンソンの論文の10月6日付より早く、2番目である。しかし欧米の研究者の間では後者の結果がアメリカ物理学会報告によって知られており、ネッダーマイヤーとアンダーソンの論文と並んで引用されている。

となっています。「素粒子の世界を拓く」のp.52にも各グループの論文投稿時期が、 明記されています。(ネッダーマイヤーとアンダーソンのグループは、3月30日投稿) やはり、最初の発見者以外はどうしても知名度、地域の認知度により忘れられ易いの でしょうか。

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アンダーソンとミリカン

 アンダーソンとミリカン は別ページに独立しました。

ミューオンにつけられたいろいろな名前

メソンの名付け親

 メソトロンと名づけたのはミリカンだとか。湯川がメソトロンと名づけ、ハイゼンベルクがそれはおかしい、メソンでなければと言った、と言うのをどこかで読んだ記憶があるので、斎藤さんの話を聞いて最初「おや?」と思いました。しかし、斎藤さんの話は生々しく作り話とは思えません。

 ウエブサイト"Homi Jehangir Bhabha" の "It was Bhabha who suggested the name 'meson'" ではじまるパラグラフにそのようなことが書かれています。そして、このドキュメントを信じるとメソンの名付け親はバーバーということになりそうです。

 でも、相変わらずなぜμとπなのか分かりません。おそらくμはmesonのMからなのでしょうが。

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ユーコンからメソンへの道のり

湯川がメソトロンと名づけ、ハイゼンベルクがそれはおかしい、メソンでなければと言った、と言うのをどこかで読んだ記憶がある… (O)

 Oさんが記憶されているのは、私のメール [644] (12 Jan 2007) に書いた次の話かも知れません。ガモフ著 "The Great Physicists from Galileo to Einstein" に書いてある話です。

 初めのうち「ユーコン」や「重い電子」「軽い陽子」が用いられ、そのうちギリシャ語で「中間」を意味する "mesos" にちなんだ「メソトロン」が提唱されましたが、古典言語の教授だったハイゼンベルクの父親が "tr" が入るのはおかしいと反対したとのことです。ギリシャ語で「琥珀(こはく)」を意味する "electra" にはもともと "tr" が入っているので、これにちなんだ "electron"(電子)はよいのですが、"mesos" には "tr" が入っていないというわけです。そこで、フランスの物理学者が、フランス語で「家」を意味する「メゾン(maison)」とまぎらわしいとして反対したものの、最終的に "meson" に落ち着いたそうです。

 私も最近、"meson" が最初に文献に現れたのは、H. J. Bhabha, Nature Vol. 143, p. 276 (1939) だと、A. Pais, "Inward Bound" で知りました。C. G. Darwin, Nature Vol. 143, p. 602 (1939) という文献も併記してあります。バーバー、ダーウィン、そしてハイゼンベルクの父親の示唆と "meson" の名の最終的採用の時間的関係が分かりませんが、最終決定には彼らの示唆が、みな参考にされたのかと想像されます。

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 (パイオンのページも参照して下さい。)


Tag: 素粒子 ミューオン アンダーソン メソトロン ユーコン 仁科芳雄 ネッダーマイヤー


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Last-modified: 2017-07-09 (日) 18:25:58 (77d)