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ハイゼンベルク・パウリの場の量子論の論文

中間子第一論文では使っていない

 昨日、ハイゼンベルクとパウリが書いた最初の場の量子論の論文(以降、HP 理論)を国会図書館から入手しました。全部で80ページあります。冒頭部分を湯川会の会員ページに載せました。全文掲載したいと思いますが、ちょっと量が多いので、ちょっとずつ作業をすすめます。

 さて、湯川の第一論文とHP理論の関係ですが、ホームページにアップした HP 理論の冒頭部分の式を眺めましたところ、第一論文は HP 理論による考察は全くなされていないと断言できます。HP 理論の冒頭部分では場の正準量子化が議論されています。この議論は湯川の第2論文に使われています。

 ちまたでは、しばしば「湯川は場の量子論的考察で中間子を予言した」との言及があると思うのですが、第一論文に関しては、そのことは間違いですね。たしか、益川さんがこのような間違いを書かれていたと思うのですが…。

S [01693] (100214)

益川さんの朝日紙の文

 益川さんが朝日紙夕刊「波」欄(2006年6月30日)で湯川の第一論文の符号の間違いに言及した文は、

これ[符号の間違い]は7年前にできたハイゼンベルクとパウリの相対論的場の量子論を十分に習熟していなかったからであろう。

となっていて、必ずしも HP 理論を使ったことを意味してはいません。むしろ、HP 理論がすでにあったにもかかわらず、それを利用しなかったのが間違いの原因、といっているように取れます。

T [01694] (100214)

益川さんの『學士會報』の言葉

 最近、益川さんは次のようなこともおっしゃっているようです。

T 先生 [01672]「益川講演の要約から」

 『學士會報』(同誌は最近このような難しい漢字表記に戻りました)No. 879(2009年11月号)に、益川敏英氏が7月10日に学士会館夕食会で行った講演「七〇年代の素粒子物理学――混沌から収束へ――」の要旨が掲載されています。そこでは、湯川の中間子第一論文中の符号の間違いについて次のように述べられています。

 『ただこの論文の中の計算式には、私が大学院生の時にその原文を初めて見た瞬間、「あっ、ここ間違えている」と思ったくらいの大きな誤りがあります。ハイゼンベルグ(ママ)やパウリが作ったばかりの量子場の理論をそのまま式に適用しているため、特殊相対性理論によって計算を行うと、時間と空間を一つのまとまりと考えるローレンツメトリック(四次元時空)にマイナスの符号がつくことから、ベクトル型の交換力では斥力になってしまうのです。この誤りは、私の恩師である坂田昌一先生と共著で発表した第二論文の中では訂正されていますが、どのような形でなおされているかというと、「間違えました。ごめんなさい」ではなく、「前のこの何行目の文章は、こう読まれるべきである」という表現になっています。実はこういった表現方法は、我々の分野の論文の特徴の一つでもあるのです。』

 「ハイゼンベルグ(ママ)やパウリが作ったばかりの量子場の理論をそのまま式に適用しているため」とあったので、ハイゼンベルクとパウリの論文を見ることになったのだと記憶しています。実際に論文を見てみると、益川さんが書かれているようなところはないようです。湯川もこの論文を引用もしていませんし。

湯川がノーベル賞論文を書いたとき、次のようなことだったかも知れないと想像しました。

 ハイゼンベルクとパウリの論文は知っていたが、それで考察するには勉強不足。ちゃんと場の量子論的考察をしたかったが、八木の叱責でとにかく論文一つを仕上げなければならなかった。とりあえず、ハイゼンベルクとパウリの論文を無視して書けることだけ大急ぎで書いた。 大急ぎのあまり、妙な議論から符号を間違ってしまった。その後、秀才の坂田との共同研究で自信を持って場の量子論的考察ができるようになり、 第2論文で正しい符号を与えた。

 ところで、このハイゼンベルクとパウリの論文をすべて湯川会ホームページの会員専用ページに掲載しました。興味ある方はどうぞご覧下さい。定例会で勉強したのと同じような式が出てきますよ。

S [01695] (100217)

湯川は間違いだったとはいわなかった

 『學士會報』の益川さんの講演要約を以前それほど詳しく引用したことを忘れてしまい、先日のメールを書く際に『會報』を探しましたが見当たらず、朝日紙の記事を見て書き、失礼しました。『會報』の益川さんの話は間違いだらけという感じですね。

 斎藤さんの想像された湯川の事情は、おおむねそういうところでしょうが、ただ、湯川は第一論文の符号は間違いだったとは、後になってもいっていません。引力の原因を提唱したにしては符号は逆でも、ベクトル中間子という仮定では、たまたま場の量子論を適用して得られる結果と一致する符号を選んでいたし、第二論文でスカラー中間子を仮定して場の量子論を適用し、引力に相当する符号を得たからでしょう。

T [01696] (100217)


Tag: ハイゼンベルク パウリ 場の量子論 中間子第一論文 第一論文 中間子第二論文 第二論文 ベクトル中間子 スカラー中間子 益川敏英


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Last-modified: 2010-02-17 (水) 19:56:10 (2687d)