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第一論文の解説

ウィキペディアみたいな感じで

湯川論文の翻訳作業もいよいよ終わりですね。で、物理の中身へ入っていくわけですが、論文解説のたたき台を作るという宿題をいただいてました。随分前に一度提出させていただいたのですが、それをもとに、皆さんの翻訳原稿に脚注と図を付け加えました。

ワードファイルとPDFファイルを添付します。書き足らないことがありましたら加筆を、間違いなどありましたら訂正をしてください。質問も書き加えていただければ、いいと思います。

みんなで加筆すれば、いいものに仕上がっていくと思います。 フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』みたいな感じで行きましょう。

S

ハイゼンベルクの論文について

中性子をどういうものと考えたのか?

Tさんに提案いただいたので、書き換えようとしたところで、ふと疑問になりました。

「中性子が含むと考えた1個の電子」とありますが、中性子をどういうものと考えたのでしょうか?

たとえば、

  1. 中性子は陽子と電子とでできている。
  2. 中性子が陽子ではないが正の電荷を持った粒子と電子からできている
  3. 中性子は電子を放出して陽子になる

どこかで読んだあやふやな記憶を繋ぎ合わせて、こんなことを想像しています。

湯川論文に出てくるheavy particleの中性子状態は「電子」を放出して陽子状態になる。陽子状態は「電子」を吸収して中性子状態になる。普通の電子だったら統計性に矛盾が生じるので、特別な「電子」を想定した。「緑電子」とかいうのを聞いたような気がします。

「中性子が含む電子」というのをもう少し詳しく書きたいと思ってます。 もし、ハイゼンベルクの論文にそのような記述があれば教えていただけますでしょうか? よろしくお願いします。

S

『ベータ崩壊の古代史』では

ハイゼンベルグの原論文にあたってはいませんが、湯川先生の 『ベータ崩壊の古代史』という基研での講演会の中で、ハイゼンベルグの 考えを以下のように言ってます。

・・・一九三二年になって、中性子が見つかって、こうなるとハイゼンベルグが原子核モデル を造った。・・・・皆さん誰でもよく知っていることになるわけですけれども。しかしまた 皆さん原論文をお読みになるとわかるんですけれどもね、彼はどういうイメージをもっとったか というとですね、非常に混乱してるんですね。ある時には中性子は素粒子だというんですね。 ・・・・要するに、中性子と陽子は、何かある今の言葉でいえば核子という、・・・そういう ものの二つの違った状態だなんどともいうわけです。一方でそういっているけど、他方では、 中性子というのは陽子と電子の寄り合ったもの、複合体だということもいうてるんです。私も 大いに混乱させられました。・・・・

決定的な決め手がないため、二つのモデルの間をゆれていたのでしょうか。

M

素粒子でありながら

  1. 中性子は陽子と電子とでできている。
  2. 中性子が陽子ではないが正の電荷を持った粒子と電子からできている
  3. 中性子は電子を放出して陽子になる

ハイゼンベルクの考えは、1. と 3. の混交したもののように思われます。Mさん (00513) が教えて下さった湯川の講演にある通り、ハイゼンベルクは、「ある時には中性子は素粒子(今の言葉でいえば核子の二つの違った状態)だと」し、「他方では、中性子というのは陽子と電子の寄り合ったもの、複合体だと」しているのです。素粒子でありながら、ときには陽子+電子のような状態になっているという考え、といえばよいでしょうか。これを反映させる意味で、私は「中性子が含むと考えた1個の電子」という表現を使いました。「中性子を構成していると考えた1個の電子」としたのでは、ハイゼンベルクの考えた素粒子性の方が失われるように思います。

T

水素分子イオンから類推;注の改訂案

 Sさんが「『中性子が含む電子』というのをもう少し詳しく書きたいと思ってます。[00512] 」と書かれていましたので、私の方で以下のような改訂案を考えてみました。三つのパラグラフに分け、第二パラグラフの初めにハイゼンベルクの中性子の考えについての説明を入れたほか、細かい修正もしました。

 ハイゼンベルクは、中性子と陽子との間に働く力は、2個の陽子と1個の電子からなる系である水素分子イオンから類推して、中性子が含むと考えた1個の電子の位置交換によって生じるとした。また、2個の中性子同士の間の力は、水素分子の共有結合から類推して、それぞれの中性子が含む計2個の電子の交換によって生じるとした。陽子同士の相互作用としては、クーロン斥力しか考慮していない。
 ハイゼンベルクは上記の取り扱いにおいて、中性子を陽子と電子からなる複合体のように考えたのであるが、同時に、中性子は素粒子(いまのことばでいう核子の一つの状態)であるとも見なしている。前者の考えは、量子力学のスピン・統計の規則に合わないが、彼は、原子核サイズの領域では量子力学が成り立たなくなるものと考えた。
 なお、水素分子イオンや水素分子の中での水素原子イオンの結合は、共有される電子の運動によって決まるが、ハイゼンベルクは、中性子と陽子や中性子同士の場合には、これらの粒子の特性によって決まる、粒子間の距離 r に依存するポテンシャル関数 J(r) と K(r) でそれぞれ表わされるとした。

T

クーロン力とは別種の力を考えていたのか?

ハイゼンベルクは上記の取り扱いにおいて、中性子を陽子と電子からなる複合体のように考えたのであるが、同時に、中性子は素粒子(いまのことばでいう核子の一つの状態)であるとも見なしている。前者の考えは、量子力学のスピン・統計の規則に合わないが、彼は、原子核サイズの領域では量子力学が成り立たなくなるものと考えた。

なるほどなーと思いますが、ハイゼンベルグはアイソスピンという概念を提出しながら陽子と中性子を同等とは思っていなかったんですね。

相互作用としては、クーロンを考えていたんでしょうか?クーロンがダメなことは彼は百も承知だったと思うのですが。

ハイゼンベルクは、中性子と陽子や中性子同士の場合には、これらの粒子の特性によって決まる、粒子間の距離 r に依存するポテンシャル関数 J(r) と K(r) でそれぞれ表わされるとした。

Kがクーロン積分、Jが交換積分なら、座標で積分した後なのでrには依存しないはずですが、rの関数と思っているということは、クーロン力とは別種の力を考えていたのかなあ。(でも、方針も無く別種の《なんでもいい》力を導入すれば、それこそ何でもありなら意味が無いし...。)

O

「核子の性質から決まる」別種の力

 ハイゼンベルクは中性子と陽子や中性子同士間の核力にクーロン力を考えたのではありません(電子の交換を考えれば、クーロン力が影響しそうなものですが)。「核子の性質から決まる」別種の力として、「経験的に定めるべき」ポテンシャル関数 J(r) と K(r) を導入しているのです。なお、ハイゼンベルクのノーテーションでは、J、Kはポテンシャルそのものの粒子間距離依存性を表わしている部分で(湯川論文の「湯川ポテンシャル」に相当)、積分ではありません。

 ハイゼンベルクの論文I、IIでは、仮定したハミルトニアンの対称性や、クーロン力だけを考えた陽子・陽子間の斥力の影響(重い核の安定性を論じるには、確かに、これが重要でしょう)から、核の安定性を定性的に議論しているようです。そして、論文IIIでは、トーマス・フェルミ法の計算でその議論の裏付けをしているようですが、ドイツ語はすいすいとは読めませんし、ハイゼンベルクの物理的議論も結構複雑なようです。

T

空間を入れ替えるオペレータが導入されているか

 トーマス・フェルミ、懐かしいですね。核の大局的な性質(対称項を除く質量公式)が出てくるはずです。M1のときゼミでお勉強しました。

 核力なんて湯川型(exp{-μr}/r)ではなく、井戸型でもWoods-Saxsonでも、Gaussianでも実験データを再現しますから。特に低エネルギー散乱なんかは有効距離理論があるから原理的に決めようがないし。

 それはさて置き、関数系を別として交換力には、ハイゼンベルグ型、マヨラナ型、バートレット型があります。ハイゼンベルグの論文を実は読んだことないのですが、空間を入れ替えるようなオペレータが入ったポテンシャルが I 〜 III の論文のどこかで導入されているんでしょうね、きっと。

O

論文 I の(1)式に

 論文 I の(1)式で与えているハミルトニアンにいきなり出て来ます。中性子・陽子間の場合は湯川の第1論文(10)式最終行のτ_1、τ_2を含む()内と同じ表現で(湯川もその名を引用しているように、このオペレータのかかっている項をPlatzwechselエネルギーと呼んでいます)、中性子同士の場合は [1+τ_1^(3)] [1+τ_2^(3)] という形です。マヨラナ型、バートレット型と並んでハイゼンベルク型といわれる交換力は、空間とスピンの両方が交換されるものをいうようですが、この論文では、スピンの交換には直接言及していないようです。

T


Tag: 第一論文


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Last-modified: 2014-05-05 (月) 13:33:59 (1087d)