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[関連ページ] 中間子論の誕生前夜から誕生まで 湯川秀樹ノーベル賞受賞までの学問的時代背景



1900年頃からの流れ

 湯川秀樹の中間子論に至るまでの流れをまとめてみました。 菅野礼司先生の「日下周一シンポジウム:中間子論について」を参照しました。

J

細かく見れば

 1935年のところに原子核の構成についての考えやβ崩壊のことがまとめて書かれていますが、細かく見れば下に示すような歴史があったことになると思います。いまこの会で準備中の湯川第1論文の訳と解説に添えるものにするのであれば、ハイゼンベルクとフェルミの名前はぜひ入れておくとよいでしょう。そして、年表には湯川の口頭発表と第1論文も入れましょう。

 さらに、1937年にアンダーソンが発見したのは湯川の予言した核力を媒介する中間子ではなく、真の湯川粒子の発見は1947年まで待たなければなりませんでした。

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1932年:
 イワネンコが、中性子nは陽子pとともに原子核構成要素をなすという考えを提唱
 ハイゼンベルクが、nとpは相互に転化し得るもの考える(しかし、nはpと電子eからなるとみて、原子核とその構成要素間のスピン・統計の矛盾を残した。イワネンコの考えを取り入れればこれが解決する。ハイゼンベルクの理論は、フェルミのβ崩壊の理論と湯川の中間子論に重要な契機を与えた)

1932〜1933年:
 ハイゼンベルク、マジョラナ、ウィグナー、バートレットらが核力の現象論的研究を進め、pとnを堅く結合して原子核を作る核力の正体を研究する準備がととのえられる

1934年:
 フェルミがβ崩壊の理論を発表(β崩壊の際にνがeとともに出るとして、スピン・角運動量とエネルギー保存の矛盾が解決される)
 湯川が中間子論を口頭発表

1935年:
 湯川が中間子第1論文発表

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T

 追記

(1)Jさんが作成された年表に、相対性理論と量子力学が出来た年も入っているとよいかと思います。湯川は相対論的場の方程式であるクライン-ゴルドンの式から湯川ポテンシャルを導き、量子力学のオペレータ表現を同式に適用して中間子の質量を推定しました(先にEさんが説明されたように、不確定性原理の適用でも推定できます)ので。
 [注:一部の表現を引用に当たって修正]

(2)私が科学館へ寄贈しました湯川他著『素粒子』(岩波新書)の巻末にご参考になるような年表があったような気がします。一度ご覧下さい。

T

1920年代は科学史上特別な時代か

 中間子第1論文 3章 場に伴う量子の性質 はじめの部分に、

前章までに考慮したU場(ポテンシャル場)は、量子論の一般的な方法に従って量子化すべきである。中性子と陽子は両方ともフェルミ統計に従うので、U場に伴う量子はボーズ統計に従うべきであり、U場は電磁場の量子化と同様の方法で量子化できる。

とかいてあるのをみて、「電磁場の量子化」とあっさりかいてあるけど、聞いたこともない言葉やなあと思い、ネットでちょっと調べてみましたら、物理科の専門課程で習う内容のようで、難しそうですね。

 また、1920年代の科学史、「天才たちの5年間」というのをちょっと覗いてみました。

http://homepage3.nifty.com/oya2/physics/qed/qed_ai.htm

 湯川論文がかかれた直近の時代には、ハイゼンベルク、パウリ、ディラックなど、本当に多くの業績が生まれていて、中間子論文の背景になっているというだけでなく、歴史(科学史)上でも特別な時代なのかも、と思ったりしました。以下、その一部を引用:

*1928〜1929 ハイゼンベルク、パウリ
 波動場の量子動力学:QED 構築開始
 マックスウェル・ローレンツの古典電磁気学の粒子性記述への移行(第二量子化の手法)
 後に、ディラック方程式との等価性が証明される
 全ハミルトニアン=場+粒子+相互作用
 相対論的不変性の証明を試みる中で、手に負えない無限大の存在に気づく
 あまりの困難さにパウリは田舎へ帰って小説家になろうとまでしたという
 1930年 パウリは、弟子のオッペンハイマーに水素原子中の電子の自己エネルギーを計算…

*1928 ディラック
 電子の相対論的波動方程式:ディラック方程式
 →反粒子の存在予言、スピンの量子論的説明
 →1933年、陽電子の発見を待ってノーベル賞受賞
 1926年末〜27年初、相対論との融合に着手
 1927年1月末、歴史的大論文を投稿「放射の放出と吸収の量子論」
 ハミルトニアンは原子と場と両方の相互作用の和
 放射-吸収のアインシュタイン理論を説明
 ディラックは量子論+電磁場の力学=「量子電磁力学(電気力学)」と名づけた

U


Tag: 物理学史


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Last-modified: 2014-05-05 (月) 13:31:26 (1149d)