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§2. 相互作用を記述する場

超訳例1

  電磁場を記述するのにスカラーポテンシャル(ポテンシャルとは位置のエネルギーの意味)というものが用いられる。これからの類推で、中性子と陽子の間の核力の場を記述するために、U(x, y, z, t) という関数を使うことにする。この関数は、電磁場のポテンシャルに対する方程式に似た式を満たすはずである。

 方程式

     Eqn1.jpg     (1)

は、電磁場の場合のものであり、時間依存性がない静的な場では、

     ΔU = 0

となる。ここで、Δはラプラシアンと呼ばれる2階微分演算子である。相互作用に方向性のない中心対称という条件のもとでは、ラプラシアンは距離 r だけで表わされ、

     (1/r^2)(d/dr)(r^2d/dr)U = 0

となる。U ∝ 1/r はこれを満たす解であり、クーロン力はこのポテンシャルを微分して得られるので、距離の逆2乗に比例するというよく知られた形になる。

 しかしながら、核力のポテンシャルはクーロン型よりも、距離とともにもっと速く減少することが実験で分かっている。そこで、このポテンシャルは、たとえば、

     Eqn2.jpg     (2)

という形で表わされると考える。ここで、g は電荷の次元、すなわち、cm^(3/2)s^(-1)g^(1/2) の次元をもつ定数で、λは cm^(-1) の次元をもつ定数である。

 この関数は次の式の静的な中心対称解である。

     Eqn3.jpg     (3)

つまり、関数 (2) は

     {(1/r^2)(d/dr)(r^2d/dr)−λ^2}U = 0

を満たす。したがって、(1) 式の演算子部分に定数項λ^2 を加えて一般化した (3) 式が、真空中での U に対して成り立つ方程式であると仮定する。核子が存在するとき、この U場がそれらと相互作用して、中性子状態から陽子状態への転化を起こす。

 [注]関数 (2) は、のちにユカワ・ポテンシャルと呼ばれ、原子核物理学だけでなく、原子・分子物理学でも用いられるようになる。(3) 式はクライン-ゴルドン方程式と同じ形をしているが、湯川はクライン-ゴルドン方程式から出発したと考えないほうがよい。そう考えると、§3 中の (12) 式前後の記述が不可解となる。

 (以下検討中)

070602 T

超訳例2

   まづ、湯川は、核子間の相互作用の場を考えるために電磁場のスカラーポテンシャルからの類推により 関数 U(x,y,z,t) を導入した。仮にこの場が電磁場と同様のポテンシャルを持つとすると 真空中では、よく知られた(1)の形の波動方程式に記述することができる。

Eqn201.jpg

この式に現れるcは、c > 0 の適当な係数であり、波動方程式で扱う波の伝播する速さに相当する。Δは、ラプラシアンと呼ばれる 演算子で、

Eqn202.jpg

を表している。これを、式(1)に適用すると、

Eqn203.jpg

となる。 原点に点電荷のある場合には、この方程式には1/rにある定数をかけた解を持っている。 これは、よく知られているように静的な電磁気力に対する逆2乗の法則が導かれ、 その力の到達範囲は、遠距離にまで及ぶ。

 一方、いま考えようとしている核子間に働く力は、実験結果によると核子間の距離が大きくなると急速に 減少することがわかっている。ここで湯川は、このような特性のポテンシャルとして下記のようなポテンシャルを 仮定した。

Eqn204.jpg

ここで, gは電荷の次元、すなわちcm^(3/2)s^(-1)g^(1/2)をもつ定数で, λ は cm^(-1) の次元をもつ定数である。この形のポテンシャルは、λの値により力の及ぶ範囲が 変わるが、下図に示すように、

Eqn205.jpg

適当な値を取ると原点から離れると急速に0に近づき、力の及ぶ範囲が原点付近に限られる。 この関数は、よく知られたクライン--ゴルドンの波動方程式

Eqn206.jpg

の静的な中心対称解である。 この解は、以下 *1 のようにして導く事が出来る。

 中性子、陽子の原子核内での速度は小さいので、問題の主要な特徴は時間に無関係な方程式

Eqn207.jpg

で表されるとする。球対象な解U(r)を求めるため、Δの極座標表示中、θとφ での偏微分項は不要であり、

Eqn208.jpg

を使用する。また、(a)式においてλ ^ 2 = 0 とすれば、電磁場の方程式となり、その解が U1/rであることから、求める解は次の形になると仮定する。

Eqn209.jpg

(b)と(c)を(a)に代入すると、次式を得る。

Eqn210.jpg

指数関数の微分の性質から、uは指数関数で表せることが分かる。したがって、

Eqn211.jpg

を得る。局所的な場を考えるため、複号のうち正号のほうは、無視する。

(途中まで)070602 M


Tag: 第一論文 クライン−ゴルドン方程式 超訳


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最新の10件を表示しています。 コメントページを参照

  •  超訳例1では、式の数を原論文より減らすつもりですが、ここまでのところでは、分かりやすくしようとして、逆に増えています。 -- T 2007-06-02 (土) 21:38:14
  • 実は、以前ここまで作成したところで頓挫してしまいました。作成方針としては、できる限り訳文に沿って説明し数式部分については、数式が何を意味するのか繁雑にならない程度に説明を加えて、注で補う形をとろうとしていました。 -- M 2007-06-02 (土) 23:25:53
  •  以前ここまで作成されていたと聞き、納得です。レスポンスがびっくりするほど速いと思っていました。それでは、ここで一休みして、フリー・コメント & ディスカッションのページで超訳のあり方を議論しましょうか。 -- T 2007-06-03 (日) 07:49:03
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*1 [参考文献]Enrico Fermi, Nuclear Physics, revised ed.(University of Chicago Press,1950) T氏による。

添付ファイル: fileEqn205.jpg 296件 [詳細] fileEqn1.jpg 312件 [詳細] fileEqn3.jpg 286件 [詳細] fileEqn207.jpg 290件 [詳細] fileEqn202.jpg 347件 [詳細] fileEqn209.jpg 307件 [詳細] fileEqn210.jpg 310件 [詳細] fileEqn203.jpg 310件 [詳細] fileEqn2.jpg 151件 [詳細] fileEqn211.jpg 299件 [詳細] fileEqn206.jpg 319件 [詳細] fileEqn208.jpg 301件 [詳細] fileEqn201.jpg 314件 [詳細] fileEqn204.jpg 305件 [詳細]

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Last-modified: 2017-07-09 (日) 18:25:58 (105d)