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 中見出し中の「1.1.」など数字は、その注あるいは解説に対応する項目のあるノーベル賞論文(シンポジウムで配付した和訳)の章と、章内での注・解説の通し番号を示す。追加のものに対する通し番号は、さしあたり、すべて X とする。「(p. 1)」 は上記和訳の第1ページ中の項目に関するものであることを示す。そのあとに、訳文の関連箇所、あるいは、それを省略した表現を記す。この「注と解説p01」に集めてあるのは、すべて、第1ページ中の項目についてのものである。第2ページ以下に関するものは、「注と解説p02」などとして作成した(章で分けると、Wiki の一つのページが大きくなりすぎる場合が生じるので、和訳のページ毎に作った)。(T)

ノーベル賞論文§1の注と解説

1.1. (p. 1) 量子論の現段階

 1934年ごろ。阪大でも菊池正士によって中性子の実験が始まろうとしていた。その装置(コッククロフト・ウォルトン型加速器)は科学館 4F に展示されている。湯川は菊池が阪大で実験をすることを知り、京大から阪大へ移ることを熱望したと考えられる(湯川著『旅人』にある八木秀次との会談)。菊池正士(1902―1974)は1928年、理研において電子線回折に関する実験に成功し、世界的に認められた。1934年に阪大理学部教授に就任し、サイクロトロン建設にも尽力。その後、東大原子核研究所長、日本原子力研究所理事長、東京理科大学長等を歴任し、文化勲章を受章。この論文の末尾に湯川は菊池への謝辞を述べている。

 [「菊池正士」へのリンクが2カ所に作られていましたが、しつこい感じがしましたので、1カ所だけにしました。また、二つ目の「菊池正士」のところで、段落を変えてありましたが、印刷にする場合を考えると、一つの段落が小さすぎるように思い、再びつなぎました。T]

1.2. (p. 1) 素粒子の相互作用について知られていない

 陽子や中性子がどのようにして、くっつき合い、原子核をつくるのか、その力の源がまったくの謎。当時知られていた力、重力や電磁気力では、原子核はつくれない。「原子核の中で陽子や中性子は一体どのような相互作用をしているのだろうか?」ということ。

1.3. (p. 1) ハイゼンベルクの核構造についての考え

 ハイゼンベルクは、中性子と陽子との間に働く力は、2個の陽子と1個の電子からなる系である水素分子イオンから類推して、中性子が含むと考えた1 個の電子の位置交換によって生じるとした。また、2個の中性子同士の間の力は、水素分子の共有結合から類推して、それぞれの中性子が含む計2個の電子の交換によって生じるとした。陽子同士の相互作用としては、クーロン斥力しか考慮していない。ハイゼンベルクは上記の取り扱いにおいて、中性子を陽子と電子からなる複合体のように考えたると同時に、中性子は素粒子(いまのことばでいう核子の一つの状態)であるとも見なしている。前者の考えは、量子力学のスピン・統計の規則に合わないが、彼は、原子核サイズの領域では量子力学が成り立たなくなるものと考えた。なお、水素分子イオンや水素分子の中での水素原子イオンの結合は、共有される電子の運動によって決まるが、ハイゼンベルクは、中性子と陽子や中性子同士の場合には、これらの粒子の特性によって決まる、粒子間の距離 r に依存するポテンシャル関数 J(r) と K(r) でそれぞれ表わされるとした。湯川は、ハイゼンベルクとは異なる考え方はをもとに、この関数に相当するポテンシャルの具体的な形を提唱したのである。

 [ハイゼンベルクの核模型も参照]

1.4. (p. 1) β崩壊

 原子核から電子が放出され、原子核の原子番号が1増える現象。陽電子が放出されるときは、原子番号が1減少する。

1.5. (p. 1) 「ニュートリノ」仮説

 パウリが提唱したもの。β 崩壊で放出される電子のエネルギーは0から有限の値まで連続的に観測されていて、ベータ崩壊前後の原子核の質量差とエネルギーの保存則が満たされない。そこでパウリは、β崩壊のときに電子とともにニュートリノという粒子も同時に放出されるとして、エネルギー保存則を成り立たせた。パウリは、中性子という名を使ったが、チャドウィックが1932年に発見した粒子が中性子と呼ばれたので、フェルミはこれと区別するために、パウリの「中性子」を "neutrino(ニュートリノ、または中性微子)" と呼ぶことにした。ただ、当時の欧米では新粒子を仮定することは、いわゆる「オッカムのカミソリ」という哲学によって、ご法度であった。提唱したパウリも「クソッタレ粒子」とかいったそうで(出典?)、ニュートリノ仮説を論文にはしなかった。そのため、湯川はフェルミの論文を見るまでニュートリノ仮説を知らなかった(基研での講演「ベータ崩壊の古代史」。『素粒子の世界を拓く』(京都大学学術出版会)p. 49ににも述べられている)。

1.6. (p. 1) 相互作用はフェルミ[の場合]より大きくなる

【もしも後者の過程(転化によって解放されたエネルギーが別の重い粒子に吸収される)の起こる確率が前者(β崩壊の過程)のそれより大きければ、中性子と陽子の間の相互作用はフェルミ[の場合]より大きくなる】
 もしも、相互作用がなければ崩壊はしない。したがって、崩壊確率が大きいということは、相互作用も大きいということ。これでいいの?

 [修正案 T]ここで「フェルミの場合」といっているのは、タムとイワネンコが試みた、ニュートリノと電子を交換するフェルミ型の相互作用によって中性子と陽子を結びつける力が生じているとする考えである。ニュートリノと電子の交換でなく、湯川が提唱する新しい量子の交換による中性子・陽子間の転化確率がβ崩壊の確率より大きいと仮定すれば、当然それはフェルミ型相互作用による力より大きな力を生じることになる。

 (注 T:現訳文では[の場合]のところが「仮説」となっているが、フェルミ仮説といったのでは、フェルミ自身がニュートリノと電子の交換による核力を考えたように取れて、まずい。ここでは、詳しくいえば、「フェルミ型の相互作用を核力の原因と考えた場合」の意味である。)


Tag: 注と解説 菊池正士 ハイゼンベルク チャドウィック フェルミ ニュートリノ パウリ タム イワネンコ クソッタレ粒子 ベータ崩壊


修正意見等を書き込んでください。もちろん直接修正してもらってもかまいません。

最新の10件を表示しています。 コメントページを参照

  •   ノーベル賞論文和訳につける注が、ある程度出来ていますが、それをさらに充実させ磨きをかけるためのページとして作りました。
     ページ題名中の「p01」(半角文字を使用)はその中に書く項目の和訳(シンポジウムで配付のもの)中のページが第1ページであることを示しています。
    ・「注と解説p01」が大きくなりすぎるときには、「注と解説p01a」「注と解説p01b」などをつくる
    ・たとえば、和訳10ページ目の項目についての注や解説を集めたり新しく書くには、「注と解説p10」をつくる
    という具合にすれば、このサイトの「一覧」で順に表示されて、便利かと思います。  とりあえず、既存の注をコピーし、字句・表現などで気づいた修正を加えながら、ページを作りを進めます。
     注あるいは解説の番号は、一応、昨年度作成した和訳中のものをつけておき、新しく挿入するものについては、さしあたり「X」とすることにしましょう。-- T 2007-06-04 (月) 10:28:44
  • 印刷にする場合とありますが、ここはあくまで作業場として現段階ではレイアウトは無視してパラグラフで切っていくほうが作業しやすいと思います。 -- いわさき 2007-06-19 (火) 15:18:42
  •  パラグラフで切るとは、具体的には、どのようにするということでしょうか。たとえば、このページの中見出し項目を全部別々のページに分けるということですか。それではあまりにもばらばらで、まとめるときに大変かと思います。また、注については、数式の説明等は別として、すでに相当まとまっているので、いまさら、ばらすのは逆行にもなるかと思います。 -- T 2007-07-04 (水) 08:22:43
  •  上記コメントへの追加です。注・解説の素材となる議論は、もちろん、他の多くのページと同様に、別ページに書けばよいのですが、「注と解説p..」のページは、すでに注・解説の形で提案されたもの、それらに対する代案、新しく注・解説の形にまとめられた文、などを集める、いわば完成度のある程度高い作業場として準備したつもりです。 -- T 2007-07-04 (水) 16:35:15
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Last-modified: 2017-07-09 (日) 18:25:57 (105d)